医薬品の管理・発注
さまざまな処方箋に対応できるよう、多様な医薬品を取り扱っている調剤薬局。ここでは、医薬品の管理・発注業務における、薬剤師の役割と業務について解説していきます。
医薬品の管理・発注とは
薬剤師は通常の調剤業務だけでなく、勤務する薬局や店舗の薬剤管理および発注業務も担います。取り扱う医薬品の在庫を管理し、その品質と保管環境が適正であるかどうかを定期的なチェックを実施。さらに、在庫切れが起きないよう、必要な医薬品の発注を行います。
こうした業務を行える薬剤師を管理薬剤師と呼び、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」によって、調剤薬局など1つの店舗・職場に1名の設置が義務付けられています。
ちなみに、管理薬剤師になるには「薬局での5年以上の実務経験および認定薬剤師の資格」という、2つの要件を満たすことが推奨されています。
医薬品の管理・発注で
特に気を付けるべきポイント
管理薬剤師として医薬品の管理・発注業務を担当する場合、薬機法・薬剤師法・麻薬及び向精神薬取締法・覚せい剤取締法・健康保険法など、さまざまな法律に基づいて適切な業務を行わなくてはなりません。場合によっては行政の立ち入り検査・許認可関連業務についても責任者として担当するため、関連する法律についての正しい理解が求められます。
また、ただ単に必要な医薬品を発注するだけでなく、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)への置き換え」「仕入れや売り上げの金額を管理」「MS(医薬品卸販売担当者)との価格交渉」など、経営面についても考慮することが必要です。
新卒薬剤師が学ぶべきポイント
管理薬剤師は、調剤薬局などの店舗における医薬品管理の責任者となります。そのため、幅広い医薬品の知識はもちろん、治療法や医療制度にも精通していなければなりません。年々変化する各種保険法や医療報酬、新薬などについての情報をしっかりとチェックし、知識をアップデートしていくことが大切です。また、知り得た情報については各スタッフと共有していくことも管理薬剤師の業務となるため、情報共有の仕方やコミュニケーションについても学んでおく必要もあります。
さらに、上でも述べましたが管理薬剤師は医薬品の管理・発注業務を通して、経営面にも考慮する必要があります。そのため、管理薬剤師として働く場合は経営スキルについても身につけておくと良いでしょう。ただし、もっとも考慮すべきは企業や店舗の利益ではなく、患者様の利益であることを念頭に置いておくことが大切です。
現職薬剤師に聞いた
医薬品の管理・発注のこだわりポイント
薬剤師歴4年目愛知学院大学出身
月の薬剤使用量を把握して早めに発注
昨今、出荷調整や出荷調整による薬剤不足が問題となっておりますが代替薬がない場合もあります。そのため月の薬剤使用量を把握し、早めに発注をかけておくことでできるだけ欠品が出ない様に気を付けています。それでも入荷しない薬は他店舗間の分譲で対応しています。
薬剤師歴2年目名城大学出身
毎月の処方量・頻度を確認して不足を防止
不足が発生しないように毎月の処方量、頻度を確認して発注しています。決算などのときは、来月以降の発注でいいものはそちらにまわしたりして、余分な在庫を持たないようにすることも意識しないといけないため難しいと感じる時もあります。また、期限が近いものや不動のものは、定期的にチェックし、多店舗へ分譲することで、廃棄にならないよう心がけています。
薬剤師歴3年目名城大学出身
卸への確認、メーカー発注に配慮
特定の患者様にしか処方されない薬については調剤する時に次回調剤できる分の在庫があるか確認したり、誰に何錠処方されるか付箋にメモしたものを薬の箱に貼るなど不足がないようにしています。発注してもすぐに納品されない薬も多くあるので、卸への確認や他メーカーの発注など在庫を確保できるようにしています。
薬剤師歴2年目名城大学出身
使用期限が迫っている医薬品を定期的にチェック
まだ医薬品の管理・発注を主にはやっていませんが、不動になって期限がせまっている医薬品はなるべく早めに気づけるように定期的に在庫を確認し、他店舗に分譲できるかを確認するよう意識しています。
管理薬剤師として医薬品の管理・発注を行うためには、原則として「薬局における5年以上の実務経験」と「中立的かつ公共性のある団体の認証を受ける」ことが必要です。新卒から管理薬剤師を目指すためには、まず経験が必須となるため、薬剤師としての業務をしっかりこなすことが第一目標です。
また、管理薬剤師は医薬品の管理はもちろん、発注業務を通して経営にも関与する立場となります。幅広い情報収集や、経営的な視点からの判断力、責任者としてのリーダーシップなど、多彩な能力が求められます。キャリアを積んで管理薬剤師を目指すのであれば、新卒からでもこういった視点を大切にしながら業務にあたるようにしましょう。
「健康ステーション」を展開する
トーカイ薬局の取り組み
引用元:トーカイ薬局公式HPhttps://www.tokai-pharmacy.com/
2024年現在、愛知県と岐阜県に根差して24店舗の薬局を展開しているトーカイ薬局。「人の心の、いちばん近くに」を掲げ、地域の健康を守るための取り組みを続けています。
特に特徴的なのが、地域の健康ステーションとしての取り組み。トーカイ薬局の窓口にて、薬剤師・栄養士による健康相談を実施することで、ただ「薬を貰いに来る」だけの薬局とは異なる地域貢献を果たしています。また、地域の健康を守るためのイベントなども豊富に企画。中には新卒1年目の薬剤師が企画したものもあるとのことです。


愛知学院大学出身
適正在庫をシーズンごとに調整しています
特定の患者様専用の薬はカレンダーにて受診日予定を確認することで、漏れなく在庫できるように管理していています。 また薬が不足した場合は患者様の迷惑になってしまうため、適正在庫をシーズンごとに確認して調整するようにしていますが、まだまだ万全にはできずに未熟さを感じる一方、薬局管理の一つとして関与できるためやりがいを感じてます。